あらかじめ箋線を貼った品々を中村さんにお見せする。 皆さん疲れが出てきました。甘い物が欲しい〜〜! この家には何もありません。食べ物が──。 そうそう、チョコレートを持ってきた事を思い出す。 ヨカッタ!丁度6個あった!
「一寸、休憩致しましょう〜〜」私は言い、千代美ちゃんは、すぐお湯を沸かす。
ハーブティを飲みながら・・・チョコを分配する。 「いやぁ〜〜うまいもんだネ。」「うまい!」 「何んか、例え話としては、一寸問題あるけど、遭難にあって、チョコレートで生きのびた感じだネ。」 1つのチョコをフムフム頬ばって頂くこの小さな幸せ!
大体終わりに近づいた時、中村さんが、「このスペインの家具はどうします?」 「う〜〜ん。この家具がないと湯河原の家は何もなくなってしまうし、さびしくなるので、当分置いておこうと子供達と決めてあります。」 「分かりました。」
作業終了後も丸テーブルを囲み、ワイワイと。 大いに喋り、伊丹さんを思い出し、「こうだった、あゝだった」と。一緒に旅を沢山した佐藤さんの独壇場!お話が面白いので、ついつい時間の過ぎるのも忘れます。
し〜〜んと静まりかえった家で万平と私。 親子で湯河原は何年振り?かしら。 30才の息子と私。
私は迷っていました。あの・・・スペインの家具・・・・。 あの家具は私が伊丹と知り合う前から、伊丹と一緒だった。 ・・・・コレハ、・・・・伊丹十三の引っ越し・・・・。 「伊丹十三記念館」は、「伊丹十三の家」である。 そう、「伊丹十三の家」に、伊丹を引っ越しさせるんだから・・・・一番近くでず──っと一緒に生活していた大切なものを伊丹の為に置くべきだ! 私は万平に言いました。話を聞いて「分かった。それでいいじゃない。あとはかあちゃんから万作さんに了解の電話をしてね。」 万作にすぐ電話をしました。 「あぁ、そう。かあちゃんがそう思うなら、そうすればいいんじゃないかな。」
私達親子にとっても思い出が一杯、ボロボロですが一番大切な家具は、「記念館」に行くことになりました。
私は特大の箋線をスペインの家具にペタンと力を込めて貼りつけました。
宮本信子